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真のソニーパネルを目指して [Sony・TV]

International CES 2007、これでもかと新技術・新製品が目白押しのSonyブースの中で、やはり一番の注目株は、27インチ有機ELディスプレイの参考展示でしょう。各メディアでもSonyブースといえば何はなくともこれ、とばかりに記事になっています。

ソニーのディスプレイ切り札「有機EL」――コントラスト比100万対1の秘密 (ITmedia +D LifeStyle)

2007 International CES特別編 進化するフラットテレビ 改良型有機ELに第8世代プラズマ (Impress AV Watch)

FDトリニトロンWEGAがあまりにうまくいってしまったため、液晶・プラズマ世代での市場の急速な変化を読み切れずに出遅れ、韓国サムスンとの合弁でようやく失地回復しつつあるSonyのテレビ事業にとって、完全自社技術で高画質の薄型ディスプレイパネルを実現するのは宿願と言っていいでしょう。

Sonyも色々な技術に挑戦してきましたが、期待を集めていたFEDは可能性が薄いらしく外部に分社化、社内リソースをこの有機EL一本に絞って進めていくことになったようです。

ではあのWalkman NW-S600/700にも採用されている、「有機EL」という技術を見ていきましょう。

有機ELのELとは“ElectroLuminescence(エレクトロルミネッセンス)”の略で、光や電気などの外部の力を利用して物質を励起状態にし、その物質が基底状態に戻るときにエネルギーを光として放出する発光現象“ルミネッセンス”の一種のことです。

(励起状態・基底状態とはなんぞや?と言われると量子力学の話になってしまうので、ここでは割愛します(^^;))

有機ELの科学(nanoelectronics.jp)

上記サイトで解説されているとおり、ホタルのおしりの発光やルビーの赤い輝き、オーロラの発光もルミネッセンスの一種です。

このルミネッセンスを起こす物質が有機分子であり、それを励起させるのが電子なので「有機・エレクトロ・ルミネッセンス」=「有機EL」となるわけです。

有機ELディスプレイの基本構造は下の図のようになっています。

有機ELのサンドイッチ構造(nanoelectronics.jp)

上の図の中で黄色の「カソード」と青の「アノード」は電極のことで、まずはカソードから電子が、アノードから正孔(ホール)が放出されます。この電子と正孔は共に輸送層を通過し、真ん中の赤で示された発光層(EML)で結合してエネルギーを出します。このエネルギーで発光層の有機分子が励起され、それが基底状態に戻るときに光を発しディスプレイの光となるわけです。

この有機ELディスプレイの特長は、

1. 高コントラスト

「液晶」というのは、言うなれば窓のブラインドのようなもので、自らは光を発さず、液晶の分子の向きが変化して、常時点灯しているバックライトの光の透過量を調節することで画像を作ります。

なのでどんなに頑張っても、完全にはバックライトの光をシャットアウト出来ず、光が漏れて黒が白く浮いたような黒になってしまいます。液晶のコントラストが低いと言われる原因はそこにあります。

それに対し有機ELは、ブラウン管やプラズマと同じく自らが光る「自発光ディスプレイ」なので、黒を表現したければその画素は発光させなければ良く、黒は完全な黒となってコントラストは大幅に向上することになります。今回のSonyのディスプレイはコントラスト比が100万対1、液晶BRAVIAの1500対1とは桁が違いますね。

2. 高視野角

これも自発光ディスプレイなので、液晶と違って視野角は完全に180度になります。

3. 高速応答

液晶は電圧をかけてから分子の向きが変化し始めるまでに時間がかかるので、画像の表示速度に追いつけず、スポーツなど動きの速い動画などで映像のブレが発生します。有機ELは電圧をかけた瞬間に発光し、電流を変化させれば発光輝度もそれに応じて高速に変化するので、応答速度が速く動画ブレが発生しにくくなります。

4. 低消費電力

光の量をコントロールする液晶部と、発光するバックライト部という二つの装置が必要で、バックライトの光量の3分の1程度しか活用できない液晶ディスプレイに比べ、構造が単純で光のエネルギー活用効率が高い有機ELは低消費電力が期待できます。

また不活性ガスに高電圧の放電を行って発光させるプラズマディスプレイと違い、有機ELは低電圧で発光するのでやはり低消費電力が期待できます。

5. 超薄型

上の図を見ていただいてお分かりのとおり、有機ELは構造が単純で、有機分子膜を電極で挟んだだけのものなので、ディスプレイそのものを大幅に薄くすることが出来ます。今回のSonyは27インチでも最薄部10mmと驚異的な薄さになってますね。

こういったあたりでしょうか。

基礎的な部分だけでもこれだけ有利な有機ELディスプレイですが、Sonyの有機ELはさらなる工夫が随所に見られます。

ITmediaの説明文写真を見ると、

このディスプレイ最大の特長は「Super Top Emission(STE)」ということになっています。このSTE、コアなSonyファンの皆様なら聞いたことあるでしょう。このSTEを使った製品は既に発売された歴史があるのです。

その製品とは…

パーソナルエンターテインメントオーガナイザー CLIE PEG-VZ90

2年半前に発売になったCLIE VZ90に搭載されている、3.8インチという世界最大のアクティブマトリックス有機ELディスプレイ(今でもこの記録は破られてないはず。)には、STEが使われています。

当時のSonyのプレスリリースにもちゃんとSTEが出てきます。

"クリエ"向けにフルカラー有機ELディスプレイパネルの量産を開始
~ブラウン管を超える高画質映像をモバイル機器で実現~

残念ながらクリエそのものはフェードアウトしてしまいましたが、ここで有機ELに挑戦したことは、ちゃんと今回の27インチディスプレイにつながっていたわけです。

ここでCLIE VZ90登場時にSonyが出した資料を発見したので、それを見ながらこのSTEという技術を見ていきます。

ソニー独自の技術「スーパートップエミッション」によるフルカラー有機ELパネル(PDF)

まずSTE最大の特徴は、その名前の由来になっているとおり、普通の有機ELディスプレイとは逆に、上面側から光をとりだすようになっていることです。

このように駆動用のTFT基板があるアノード電極側ではなく、カソード電極側の光を使うので、回路が光の邪魔にならず、開口率が高く、高輝度を実現しています。3LCDとSXRDの関係に似ていますね。

次のトピックは「マイクロキャビティ構造」。RGBで映像を作る際に三つの色の光を最も有利な波長の色で取り出すために、光の波長にあわせてRGB三つの有機EL膜の厚さを最適化してあるという技術です。

これと外光反射を防ぐための偏光フィルタを省き、色純度を高めるためのカラーフィルタを搭載することで、標準的なブラウン管ディスプレイ比147%という高い色再現性を実現しています。

このようにSony独自のSTE技術によって、さらに高輝度・高色純度という性能を得て、あの27インチ有機ELディスプレイの綺麗さが実現したのです。

ほんとあのときクリエで果敢にチャレンジしておいて良かった。

薄い・綺麗・低消費電力、構造が単純で、駆動用のTFT基板は液晶用の生産設備も流用可能なので、量産されればかなり安くなる可能性もある、という夢のようなディスプレイ「有機EL」、はやく出てきて欲しいところですが、実際に市販されるのはまだまだ先になります。個人的にはもしかしたらあと5年ぐらいかかるかもとさえ思うぐらい。

何が有機ELの実現を阻んでいるのか、それはとりもなおさず「寿命が短い」ということです。

有機分子は酸素や湿気に弱く、完全に封止して外気と触れさせないようにしないといけませんし、そもそも電気の力で励起状態と基底状態の行ったり来たりを繰り返しては、その度に劣化していくというのも想像がつきます。

特に問題なのがR・G・B三つの寿命がバラバラなこと。B(青)の寿命が短く、発光輝度が半減するのが約2,000時間~5,000時間だと言われており、テレビとして成立させるために必要な数万時間まで持って行くには、いまの10倍ぐらい寿命を延ばさなくてはいけません。

もちろんSonyも手をこまねいているわけではなく、有機材料の研究に秀でた石油会社の出光と提携して、新素材の研究・開発を行っています。

出光とソニー、有機ELディスプレイ用材料を共同開発
~両社の有機EL関連特許技術の相互利用でも基本合意~

しばらくは液晶・SXRD並立で進むであろうSonyのテレビですが、一日も早くこの有機ELテレビが実用化されて、その軽さと薄さを活かした「壁かけテレビ」ならぬ「壁テレビ」を実現して欲しいものです。

その時にはブラウン管WEGA、液晶のBRAVIAに続いて、有機ELの○○というふうに新ブランドになるのかな?


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コメント 14

かつぽん

いやいや、勉強になりましたm(__)m
ウチにもVZ90ありますが、2000時間には足元にも及ばないお陰か?
まだ退色は全くしておりません。。。
交換となると高そうですし、PIMとかで使うのは
出来る限り短時間にした方が良いかもですね。
by かつぽん (2007-01-12 15:06) 

arkstar

有機ELの寿命時間。
最大の壁はやはりそこなんですよね。
FEDが特許の関係で暗礁に乗り上げているようですし、
寿命問題がクリアできたら、ブラウン管TVの正当血統は有機ELが最右翼って事になりそうですね。
何らかのブレークスルーを期待したいですね。
by arkstar (2007-01-12 19:02) 

Riever

寿命、現時点では極端に短いですからね。ここさえクリアできれば、もはや液晶に出る幕はなさそうですね。
それにしてもあの薄さには感服しました。
by Riever (2007-01-12 21:43) 

floss

壁テレビ、欲しいです。(*^_^*)
寿命、早く伸びて欲しいですね。
名前は、ブラウン管WEGA、液晶のBRAVIAと、最後に「A」がつくのが続いたので、
有機ELは ◎◎◎◎A ・・・思いつきません(;^_^A
by floss (2007-01-12 22:26) 

ahtoh

やはり今年のSONYは一味違いますよね。
どちらかというとここ数年の守りのような製品から、攻めのような製品の発表が増えたような・・・。
by ahtoh (2007-01-12 22:39) 

 なるほど、青だけが特に寿命が短いわけですか、ほんとそこのところ頑張っていただきたいですね。いつのまにやら世の中ただ大画面ならOKみたいな風潮になってしまいましたが、ブラウン管に変わる真の高画質TVの一つが有機ELって事ですね。

今回も熟読させてもらいましたが、大変参考になりました。
そしてご苦労さまでした。
by (2007-01-13 17:50) 

kyo

青だけ寿命が短いということは、RGB各色のELがあるということですよね?
それなのにカラーフィルタが使われているのはどういう理由なんでしょうか?
ここがいまいちよくわからない…。
akoustamさんに質問するべきことでは無いとは思いますが。。
by kyo (2007-01-15 18:50) 

akoustam

>かつぽんさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

VZ90の輝度はいかがですか?確かにPDAで2,000時間となるとかなりヘビーに使わなくてはいけませんからね。だからあのとき採用できたんだと思いますが。
by akoustam (2007-01-16 01:13) 

akoustam

>arkstarさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

最後はやっぱり寿命なんでしょうね。展示の様子を見る限り、製品としては完成の域に達しているけど、一般に市販できるだけの信頼性に問題がって感じに見えますから。

11型は結構早く出てくるかもしれません。
by akoustam (2007-01-16 01:15) 

akoustam

>Rieverさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

VZ90のあの画質で27インチ化されれば、液晶は100%勝てないでしょうね。生産が軌道に乗れば有機ELのほうが安く作れますし、なんとしてどもSonyがモノにして欲しい技術です。
by akoustam (2007-01-16 01:19) 

akoustam

>ふろすさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

最後がA、最後がA、最後がA…あ、「Walkman A」!(^^;)
by akoustam (2007-01-16 01:21) 

akoustam

>ahtohさん
コメント&ナイス投票ありがとうございます。

中鉢社長が未来技術担当に専念するという体制を敷くぐらいですから、未来のSonyへ向けた投資と力の入れ方は相当なものだと思います。これからが楽しみですね。
by akoustam (2007-01-16 01:23) 

akoustam

>シマリスさん
コメントありがとうございます。

Sonyのテレビ技術者としては、液晶の画質は許せない部分があって、どうしても力を入れる気にならなかったってのもありそうですね。有機ELならSonyの考える「高画質」を実現できるデバイスをっていう想いが、ようやく結実しつつあるってことなんでしょうね。
by akoustam (2007-01-16 01:25) 

akoustam

>kyoさん
コメントありがとうございます。

確かにkyoさんのおっしゃられるように、RGB各素子がその色に発光するのならカラーフィルターはいらないはずですが、SonyのSTEの資料にある通り、カラーフィルターを用いることで外光反射をカットし、有機ELの発光している色をさらに選別して、より色純度を高める事が出来ています。

ようはRGB各色で光るけれども、より色をピュアにして、コントラストを高めるために重ねてカラーフィルターも使っているということですね。
by akoustam (2007-01-16 01:33) 

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