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自前主義の限界 [気になるモノ・コト]

日本のプラズマディスプレイを引っ張ってきたPioneerが、パネルの自社生産から撤退することが正式発表されました。

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ディスプレイ事業の構造改革および企業価値向上に向けた取り組みについて (パイオニアのプレスリリースPDF)

元々はスピーカーの会社としてスタートし、一時期KENWOOD(当時はTRIO)やSANSUIと共に、“オーディオ御三家”と呼ばれるほどのオーディオ機器メーカーだったPIONEERが、プラズマディスプレイの研究を始めたのは1990年代前半のことです。

その後1997年になって富士通と同時期に初の民生用プラズマテレビを発売するなど、まさにプラズマの「パイオニア」として、Pioneerは世界をリードする存在であり続けました。

最近も他社を圧倒するコントラストを実現し、改めて高い技術力を見せつけた「KURO」ブランドを展開するなど、数ではない高画質・高級路線での利益確保を目指していましたが、販売力では“大手”というよりは“中堅”クラスに属するPioneer一社で販売できる数量では、多額の投資をした生産ラインの稼働率をあげることが出来ず、ここに来てついに自前でのパネル生産を断念、今後は松下電器からパネル調達を受けて細々とプラズマテレビ事業を継続していくこととなったわけです。

 

こと画質に関しては、ライバルの松下や日立を寄せ付けなかったPioneerパネルが市場から消えてしまうのは大変残念ですが、そんなPioneerプラズマディスプレイ事業つまずきのそもそもの原因となったのは、やはり2004年のこの出来事ではないでしょうか。

NECプラズマディスプレイ株式会社の株式取得に関するお知らせ (パイオニアのプレスリリースPDF)

2004年の10月、長期の赤字でNECのお荷物となっていたプラズマディスプレイ事業を、Pioneerが370億円で買い取ったことです。

「撤退」という結果を知っている今から考えれば、なんでこんな赤字企業を買い取ってまで生産ラインの増強を行ったのか不思議に感じますが、当時の報道を見ると、Pioneerは自社の年産60万枚の生産ラインに加え、年産50万枚のNECを手に入れることで、合計年産110万枚・世界シェア1位の座をとり、「数の論理によるコストダウン」を狙っていたのがわかります。

実際、Pioneerの伊藤社長(当時)の発言

>NECのOEMチャネルは魅力。

でわかるとおり、大手家電メーカーへのパネル外販によって事業を行ってきたNECと、自社向けがメインで外販を積極的に行ってこなかったPioneerとでは競合重複する市場が少なく、NECの買収が効果的に見えたのも仕方ありません。

しかしこの買収から一年もたたないうちに、Pioneerの見通しは甘かったことがわかってきます。NECパネルを買っていた大手家電メーカーが、プラズマテレビから撤退し始めてしまうのです。

その代表格がこの会社のこの製品。

Sony プラズマWEGA HVX

2004年の年末商戦には華々しくプラズマベガを投入していたSonyも、翌年になると「家庭向けは液晶が中心になる」と読んで、BRAVIAの登場とともに液晶一本に路線変更。これで旧NECパネルは大きな供給先を失い、自社ブランドでしか売れなくなったPioneerのプラズマパネル生産能力は、需要に対して供給過剰な状態となり、徐々にPioneerの足を引っ張る存在へとなっていったというわけです。

 

自分で研究開発をし、自分の工場で生産し、自分のブランドで売る。

この完全自前主義による垂直統合型のビジネスモデルは、じっくりと開発しゆっくり確実に投資を回収していたアナログ時代なら通用していましたが、いち早く開発し、先手をうって市場を支配しないと投資回収もままならない、スピード重視のデジタル時代には、ちょっとしたオペレーションミスで工場が余剰になったり、逆に市場の立ち上がりについていけず商機を逃してしまったりと、非常にリスキーなやりかたとなってしまいました。

ものづくり日本、それを支える自前主義も大切ですが、さじ加減を間違えるとそれがかえって撤退の原因になったりすることもあります。「何を自前でやるべきか」「何は他社からの購入で十分か」そこの見極めをしっかりしないと、これから電機メーカーは生き残っていけないでしょうね。


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Riever

技術的に「枯れて」いるならゆっくり出来ますが、現在成長のすさまじい技術を多々使っている分野だと厳しいですよね。

昨今の薄型テレビはどの方式でもまだまだ途上ですから、それだけに一つの誤った判断が身を滅ぼすようですね。
なかなか厳しい時代になったものです。
by Riever (2008-03-08 12:24) 

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