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Sony Dealer Convention 2008 リポート BRAVIA ZX1篇 [Sony・TV]

仕事に追われているうちに一週間がたってしまいましたが、Sony Dealer Convention 2008リポート、第二回は薄さ9.9mmを実現したBRAVIA ZX1の開発者セミナー篇をお送りします。

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ZX1のセミナーに登壇されたのは、ZX1の基本コンセプトの生みの親であり、LEDエッジライトを担当されたSony テレビ事業本部映像デバイス部門開発部の永谷真平氏と、機構設計を担当されたSony テレビ事業本部FTV事業部門機構設計部の藤井寛昭氏のお二人。

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ZX1誕生の元となったのは、永谷さんが3年ほど前にもたれていた「今のこの液晶テレビの厚さで本当に薄型と呼べるのか、壁にかけられるテレビと言えるのか。」という疑問。なんとかもっと薄くてカッコよくて本当に壁にかけられるテレビを作れないかということで構想を練り、2006年に本格的に開発テーマとして会社側に提案したそうです。

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上で触れたとおり永谷さんはバックライトの専門家で、過去SonyではVAIOのディスプレイのLEDバックライトなどを担当されてきたそうですが、その経験と技術の進歩するスピードから考えて2006年の段階で商品化は無理(バックライトの明るさと薄さが必要なレベルに達しない)と判断し、いったんはお蔵入りに近い状態となります。

しかし永谷さんの中には、数年のうちに必ず実現可能だという確信があり、自身の一人でもいいからやってみたいという想いもあって、2007年春にまずは数名の技術者が集まってのチャレンジが始まります。

その後夏ごろにはある程度のカタチが出来てきたそうですが、ここで外部の状況が一変します。日立やシャープが20mm前後の超薄型液晶テレビを開発し、Sonyの有機ELテレビとともに「次のテレビ」として、CEATECなどで話題をさらっていったのです。

こうなるとSonyのテレビ事業本部としても、永谷さんの研究チームに注目せざるを得ません。そこで2007年の秋ごろに本格的な開発チームを立ち上げ、その時永谷さんのチームに合流することになったのが藤井さんです。

藤井さんはメカ設計・熱設計の専門家で、過去QUALIA 004→VPL-VW100と続くSXRDフロントプロジェクターの静音化を担当し、その後はリアプロの開発を続けておられたそうです。

このように永谷さんも藤井さんも液晶テレビを作るのはこのZX1が初めて、その後聞かせていただいた話だと、開発メンバーの中には最後のトリニトロンブラウン管モニターQUALIA 015を担当された方もいらっしゃるそうで、「液晶テレビは門外漢」という技術者が中心になったことが、かえって今までの液晶テレビの常識を覆す薄さを実現する原動力となったのかもしれません。

 

僕がそう感じたのがZX1の製造方法。

電圧を加えると分子の向きが変化するという性質を持った液晶材料を前後二枚のガラスで挟み込み、分子の向きの変化によってバックライト光の透過量を変化させることで映像を生み出す、というのが液晶ディスプレイの基本原理なわけですが、液晶部分やバックライト部分にゴミが入ってはいけないので、普通の液晶テレビは、まず部品としての液晶パネルをクリーンルームで完成させ、その液晶パネルに外装ベゼル・背面外装を取り付けることで実際のテレビ製品となります。

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しかしZX1では9.9mmという薄さを実現するため、なんと液晶パネルを支えるシャーシがそのままテレビとしての外装部品を兼用するという構造が採用されています。

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つまりZX1は“液晶パネルそのものがテレビという最終製品になっている”わけで、通常の液晶テレビと違い、テレビとしての生産自体がクリーンルームで行われているというのです。

こうなるとZX1のためだけに特別な生産ラインが工場に必要になるはず。僕も思わず「それって稲沢ですか?」と質問してしまいましたが、さすがにそこは秘中の秘なのか「そのへんは、ちょっと…(笑)」と流されてしまいました(^^;

いずれにしても薄さを実現するために生産ラインから考え直すというのは、今までの液晶テレビの製法の常識にとらわれない“門外漢”ならではの発想だと思います。

 

話は元に戻って、2007年秋に本格スタートしたZX1開発プロジェクトはまずは32インチで試作が進み、当初15mmだった厚みも10mmを切るところまで到達しました。この段階まできたところで中鉢さんやストリンガーさんにも見せて、いよいよ商品化も目前と思われましたが、商品企画側から「これはまだ商品レベルではない、2009年に出すべきでは。」という意見が出され、計画が頓挫しかかったこともあったようです。

それでも止まることが無かった開発チームは、秘密が漏れないよう本社内に隔離された一角「秘密部屋」を与えられ、社内公募などで開発人員も増強し、問題点を次々と克服していって、ついに2008年秋の商品化に至ったというのが、開発ストーリーとして語られました。

 

このZX1のキモは、光源を液晶セルの背後に置く「バックライト」方式ではなく、液晶セルの四隅に置く「エッジライト方式」であること。

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そのため通常の液晶テレビで使われるCCFL(冷陰極管=蛍光灯のようなもの)ではなく、白色LED(発光ダイオード)が採用され、ZX1では4辺のベゼルの中に数百個オーダーのLEDが並べられています(正確な数を質問してみましたが「非公開」だそうです。)。

この方式はノートパソコンに多くみられ、VAIOでもtypeT(TX)での採用を皮切りにモバイル系の機種のほとんどがこの構造となっています。ここでは永谷さんのVAIOでの経験が活かされているわけですね。

 

その後は開発裏話として、キーワードに基づいた色々な話が聞けましたが、

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たとえば「ファンレス」。

これは「背面美」にもつながる話ですが、デザイン的な意味でも、薄さの実現という意味でも、音を出したくないという意味でも、当初からファンレスしかないという考えだったそうで、開発チームに最初に加わった藤井さんが、放熱や静音化など空気の流れを制御することを専門としていたのは、運命的な巡り合わせだなと感じました。

なおZX1で最も熱を出すのはベゼルにあるLEDエッジライトだと思われますが、ベゼルを含め筐体全体がヒートシンクを兼ねるような熱設計となっているので、ファンレスでも全く問題ないそうです。

また「無意識の意識」というのは、今の世の中たいていのものは手に入ってしまったので、お客さんから表立って「こんなのが欲しい!」と言われることが少なくなってきているのですが、このZX1のように実物として目の前に提示したときに「実はこんなのが欲しかったんだ!」と、自分自身では意識していなかった欲求を満たしてあげられるような製品を作っていきたいとのことでした。

 

開発のなかで特に苦労したのはこの三点。

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従来セオリーからの脱却は先ほどの製造方法の話にもありましたね。とにかく薄くするための苦労は相当なものだったようで、厚みを0.1mm削る作業が1m削る作業かと思うぐらい気の遠くなるような日々だったそうです。

冷却と輝度のバランスはLEDエッジライトのことで、テレビとして必要な輝度を得るためには単純にLEDを明るくすればいいわけですが、明るくするとその分熱を出すので今度は冷却の問題が出てくる。ここの1℃のせめぎあいが本当に大変だったとのことでした。

最後の強度の確保もZX1の大きなテーマで、薄いからといって弱いという状態にはするわけには当然いかず、設計段階から強度を考慮して作られています。

 

そんなセミナー中にZX1にかけられていた布が外され、僕らの前に姿を現したのですが、

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そのたたずまいは他のBRAVIAとは違う独特のものがあります。

背面もスリットが一切見えないスッキリしたデザインをしていて、

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スピーカーを内蔵しているテーブルトップスタンドが、細いアーム一本で10Kgを超えるZX1本体を支えられるように、本体側のジョイントとなる部分には強固なアルミブロックが備え付けられています。そのアームの中に電源ケーブルとHDMIケーブルが走るようになっているのもお見事。

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(アームから左に行くのが電源ケーブルで、右に行くのがHDMIケーブル)

アルミで出来たベゼルが鋭角に折られているのは、より薄く見せるためのデザイン上の理由と強度確保のためだそうです。

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で、ベゼルの部分が液晶パネルそのものを支えるシャーシを兼ねていることから、

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このようにベゼルと液晶面にはアルミ一枚分の段差しかありません。これが一段とZX1の薄さを際立たせます。

チューナーは昔は当たり前だったセパレート型ですが、デザインはBDレコーダーと共通化されているので、前面はスモークのアクリルパネルとなっています。

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その昔の液晶WEGA/プラズマWEGAがCoCoonと共通のデザインだったのを思い出しました。

そしてこのチューナーとディスプレイが無線接続されているのもZX1の特徴で、本体のベゼル下端がアルミではなくプラスチックの部品となっていることから、

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この部分にチューナーからの5GHz電波を受信するアンテナが仕込まれていると考えられます。ついでにこのプラスチック部分に、各種インジケーターが隠されているのも秀逸でした。

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以上BRAVIA ZX1の開発者セミナーの様子をお伝えしましたが、とにかくこの開発チームは熱い!最初から「いくらなんでもそれは無理だろう」としか思えないような高い理想を掲げるところや、たとえ背面だろうと手を抜かずに仕上げてくるところ、「薄くて・カッコいいテレビ」を実現するために過去の常識に縛られないチャレンジを行うような思い切りの良さなど、これぞSonyの技術者と思えるスピリットを持った方々だったのは印象的でした。

現在はこのZX1を元に次の段階を目指していらっしゃることだと思いますが、より薄く?より軽く?より大画面?より高画質?など進化の方向は色々とあるでしょう。果たしてZX1チームは次に何をやってくるのか、今年のBRAVIAで最も面白い製品を生み出したチームだけに今後にも期待してしまいます。

でも個人的にはまず32インチフルHD版のZX1出して欲しいですね(笑)


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Riever

ZX1の裏面は初めて見ましたが、鬱陶しい感じもなく素晴らしいですね。これで番組の方がしっかりしてくれれば・・・と思わずにはいられません。

コンパクトさを打ち出して32インチのフルHD版、出て欲しいところです。確実に売れるでしょうし。
by Riever (2008-09-25 12:19) 

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