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VAIO X 開発者セミナー リポート 誕生篇 [VAIO X-treme]

VAIO X開発者セミナー、今日は誕生篇をお送りします。


このレビューは「みんぽす」の無償イベントに参加して書かれています。(詳細は末尾で)

「それは3人の議論から始まった。」

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VAIO X シリーズ (vaio.sony.co.jp)

VAIO X シリーズ (SonyStyle)

開発を主導した林氏(Sonyでは「プログラムマネージャー」=PMと呼ばれる)によると、今回のVAIO Xは、まず3人のPMによる議論がスタート地点になっているそうで、その3人というのが上の写真に出てくる、

「ぱや」ことtype Z/type GのPMである林薫氏
「すずまさ」ことtype T(TZ)/type T(TT)のPMである鈴木雅彦氏
「すずいち」ことtype U(UX)/type PのPMである鈴木一也氏

の3氏。いずれもモバイル系VAIOの開発を担当して来たお三方です。

そこの議論で出てきたのが、

「果たして本当にVAIOは世界一のモバイルPCなのか」
「他社に比べて断トツといえる製品になっているか」
「初代PCG-505のようなインパクトを世の中に与えているか」
「お客さんから『実用的だ』と言われるようなPCになっているか」

という疑問。

もちろん製品開発者として今まで出した製品に自信はあるけど、どうしても3人の中から「まだどこか足りてないのではないか?」という引っかかりが抜けず、最後に議論は「VAIOのワクワク感が少し落ちているのかも」という結論に向かっていきます。

じゃあ突き抜けたワクワクするようなVAIO、自分たちが作りたいVAIO、とは何か?

そこから生まれたのが、“本当に持ち歩いて使える紙のノートのようなPC”というコンセプト。

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そして、紙のノートにも色々あるけど、どんなサイズのノートを目指すか目標となったのがこれ。

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この青いノート、なんとその時の3人の議論に使われた本物なんだそうで、これがVAIO Xのサイズ感を決めるベンチマークとなった、まさに“原点”ということになります。

こうして最初のコンセプトは決まりました。

次にそれをどんなパソコンに仕上げていくのか、林氏が中心となって具体的なターゲットとなるスペックを検討していくわけですが、

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ここで「ただ薄い・軽いではダメだ。薄さと軽さの追求のために、持ち歩いたユーザーががっかりするようなPCになったら本末転倒だ。」ということから、

・満足のいくバッテリー駆動時間
・「最薄部○mm」という無意味な競争ではなく、全部が薄いフルフラットにする(Sony自信への自戒を込めて)
・軽くするために全体を小さくするのではなく、11.1インチというtype Tの液晶をそのまま使う
・ユーザー(特にビジネスユース)が困るような機能(LAN端子・VGA端子)の省略はしない

という意欲的な目標スペックが決まっていきます。

もちろんそこはいくつものVAIOを開発してきた技術者集団ですから、この目標も決して夢のようなものではなく、要素技術・Intelのロードマップ・安曇野TEC(製造工場)の技術の蓄積などから考えて、「今なら出来るはずだ」という確信を持って決めたスペックでもあります。

 

…と、ここまでいかにも順調に開発が進んでいったかのように書いてますが、実はこの段階ではVAIO XはSonyという企業としての正式な製品ロードマップには乗っかっていません。この話はあくまで「こんなもの作りたいなぁ」という有志が、本来の仕事が終わった後に集まって、自分たちの願望を議論していただけのものだったのです。

しかし、そんな「欲しい・造りたい」という社員のただの願望も、真剣に説得力のあるものだったら、それを仮でもいいから勝手に設計し、周囲に理解させ、仲間を巻き込み、上層部に提案して、承認させることが出来れば、本当に商品化されてしまうというのが、Sonyという会社が伝統的に持っている文化。

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林氏を中心とした設計メンバーは、ここで本当にモックアップを造ってしまいます。

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この3Dプリンタを使って造られたモック。本来の仕事の片手間で造ったにしては、やたらと金のかかった精巧なモノになっていることに驚いてしまいますが(笑)、

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まさに百聞は一見にしかずとはこのこと、こういうものが目の前にあれば、設計メンバーがどんなVAIOを造りたいのか一目瞭然というわけです。

こうなると次は設計だけでなく、商品企画やマーケティング部隊も巻き込んでいかなくてはいけません。

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ここで巻き込まれたのが前回のリポートで出てきた商品企画の星氏と、国内マーケティング担当のI氏。こうして開発から発売までに必要なチームも出来上がったので、いよいよ林氏が上層部に掛け合うときがやってきます。

掛け合う先はVAIO事業本部 赤羽良介副本部長

実際にモックアップを見せたところ、返ってきた返事は「本当にこんなもの出来るのか?」というものでした。

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ここの議論は相当白熱したそうですが、最後は林氏の「出来ます。」の一言が決め手となり、VAIO Xは「有志の願望」から正式な「Sonyの製品」としての道を歩み始めていくことになります。

 

こうして無事VAIO Xが世に出る事にはなったものの、何せモックアップは所詮モックアップ、本当にあの大きさに必要な基板・デバイス・端子を入れていくことが出来るのかは、実際の設計を始めてみないとわかりません。

しかもデザインを担当することになった森澤氏は、前回も触れたとおり「美しさに対する妥協を許さない」デザイナー。あのロジカルな林氏をして「根性で入れる」なんて冗談を言ってしまうほど、そのデザイン・設計は困難を極めることになります。

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それを全員で克服していったのがVAIO X開発のハイライト。

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特に製造拠点である安曇野TECの存在によって、(「何の根拠があって13.9mmなんですか?」と責められつつも(笑))目標値通りの製品となったのは、

これぞ日本の工場によるMADE IN JAPANの底力!

と言って良いかと思います。

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そして安曇野TECは設計・製造だけでなく、品質テストにも活躍します。

VAIO Xは非常に薄く、しかし11.1インチ液晶を搭載したいわゆる「B5サブノート」の底面積になっているので、他のPCでは考えられなかった持ち方をユーザーにされる可能性があります。

たとえば液晶を開いた状態で、本体の端っこのパームレストの部分だけ持たれてしまうと、その一点に曲げの力がかかったり、そのまま反対方向の角だけぶつけてしまうとかが考えられるので、耐久性試験も新しいものを追加しなくてはいけなくなったのです。

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そしてそのための試験器具まで造ってしまうという念の入れよう。

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(本体の左角だけ10cmぐらいの高さから落として、何度も机にぶつけるテスト)

VAIO Xが発表になったとき、メディアの報道やユーザー掲示板などで「薄すぎて壊れやすいんじゃないの?」という意見が出ていましたが、VAIO Xはtype Gのように「強さをアピールする商品」ではないので、特別触れていないだけで、耐久性はtype Gと遜色ないレベルの試験がされているので、安心して使用出来ると思われます。

こうして目標通りのスペック、デバイスの搭載、耐久性の確保を達成しつつあったVAIO X。しかし同時に別のところで新たな懸案が発生してきます。

それは「薄く見えるためのデザイン」

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一口に「13.9mmフルフラット」と聞くと、なんて薄いパソコンなんだろうと思ってしまいますが、何の工夫も無しに厚さ13.9mmの四角い箱を作ってしまうと、実は視覚的には思ったより薄く感じないという問題があるのです。

実際に薄く見せるためのデザインが施されていない初期のモックを見てみると、

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意外と厚みがあるように見えますよね。そのためデザイン担当の森澤氏は、メンバーに雑誌「アサヒカメラ」を見せて(毎号およそ厚さが14mmぐらいある)、「これで本当に薄いって言えるの?」と問い続けることになります。

こういう時に薄く見せる手段として、PCG-505のように微妙に色を変えてツートンにしたり(505は底面と天板が薄いバイオレットシルバー、畳んだときそれに挟まれるキーボード面と液晶ベゼル面が濃いグレーになっている。これはあの後藤禎祐氏のアイデア。)、角を斜めに面取りしてΣ形状にする手段がありますが、

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これでも斜めの面が一面となって同じ光を反射するので、薄く見せるのにも限界があります。

そこで森澤氏が考えたのが「リジッドアークデザイン」。

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斜めではなく凹の字型に円形に面取りすることで、反射する光を限界まで細長くし、視覚的に非常に薄く感じるようになっています。ここらへんは“曲面反射光の魔術師”森澤有人の面目躍如といったところでしょうか。

とは言ったものの、この「凹んだ曲面上に角を面取りする」というのは、製造サイドから見れば悪夢のようなデザインです。なにせVAIO Xのパームレスト面はアルミ一枚板を使う構造。プレス加工で斜めではなく凹ませるように面取りするとなると、とてつもなく高度な技術が必要となり、部品の実装など設計的な検討もやり直しになるのです。

デザインをとるのか、スケジュールをとるのか、薄く見せるデザインにこだわる森澤氏はここで一つの策を講じます。

製造サイドには「一応斜めの面取りタイプでいこうか」という妥協案を示しつつ、問題のリジッドアークデザインのモックアップも作って、先述の赤羽副本部長のところに隠し持っていったのです。

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そして赤羽本部長が斜めの面取りしたモックに「これほんとに13.9mm?」と、予想通りの反応を示したため、森澤氏はここぞとばかりに、「こういうのもあるんですけど…」とリジッドアークデザインのモックアップを見せ、

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「これでいこう」というゴーサインをもらう事になったのです。

もちろん設計・製造サイドは「おいおい聞いてないよ」という話になったようですが、森澤氏の事前の根回しもあり、おそらく口では「無理だ」と言っていたメンバーも、心の中では「妥協はしたくない、ユーザーに驚くような製品を出したい、そういうデザインで行くべきなんだろう。」という予感があったんだと思います。紆余曲折ありながらもリジッドアークデザインで行くことでチームはまとまり、副本部長も多少のスケジュールの遅れには目をつぶってVAIO Xは完成していくことになります。

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以上VAIO X誕生までの物語をお伝えしましたが、久しぶりに「とにかく自分たちが創りたいモノを創る」というSonyの企業風土がフルに発揮された製品を見た気がしました。

最近はマーケティングの手法が発達して、「どうやら世の中にはこういう需要があるらしい」というデータを見てから、モノ造りを始めることが多くなりがちです。確かにそれはそれで市場の要望に合致した商品ですから、それなりに売れますし、商売として成功する確率も高いでしょう。

しかし消費者が「これが欲しい」とイメージ出来てしまう商品というのは、今あるものの延長線上にある少しだけ進化しただけのもので、マーケティングデータとして出てくるのは所詮は過去のデータでしかありません。

お客さんに本当に「すごい!」と驚いてもらえ、ブランド力の向上につながる商品には、「無意識の意識」という言葉に表されるとおり、はっきりと表に出てこないもやもやとした欲求を、「これだ!」とズバリ言い当てるような先進性が必要であり、それを実現するには、データに左右されない開発者の「造りたい」という信念と、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」な思い切りを許容するマネジメントサイドの覚悟がないといけません。

今のこの大不況下の中で、あえてロードマップに無かったこの製品を生みだし、発売にまで持って行ったSonyのチャレンジ精神に、今回は素直に拍手をおくりたいと思います。

次回は以上2回分の話を踏まえて、まとめ篇をお送りする予定です。

 

 


このレビューはWillVii株式会社が運営する レビューサイト「みんぽす」から招待されたイベントに参加して書かれています。本イベントへの参加及びレビュー掲載は無報酬です。また、WillViiは掲載内容に一切関与していません(本情報開示と事実誤認時の修正を除く)。本イベントに参加された他の方のレビューはこちらのみんぽすTBセンターでご覧になれます。(WillVii株式会社みんぽす運営事務局)

みんぽす


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かつぽん

やべ、今日は話が完全に被ります、
申し訳ないm(__)m
by かつぽん (2009-10-15 17:38) 

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